キャリア相談でお話を聞いていると「成長したい」「やりがいを感じたい」「条件のいい職場に転職したい」など“人により定義が異なる”言葉が出てくることがよくあります。
誰もが自然と口にする言葉ですが、実は人によって意味やイメージがまったく異なるのではないでしょうか。
その言葉の奥には、その人が本当に大切にしたい価値観がひそんでいそうです。
聞き逃さず深めてみましょう。
「あいまいな言葉」から本音が見える
キャリア相談を受けているときに出会う「あいまいな言葉」があります。
たとえば──
- 成長できる職場
- やりがいのある仕事
- 働きやすい環境
- 十分な給料
- 安定している会社
一見わかりやすく、ポジティブな表現ですが、
その“中身”をひも解いていくと、本当に人それぞれ。
たとえば「成長」という言葉ひとつでも、
- 昇進して役職が上がること
- 新しい知識を得て実践できること
- 多くの人と関わる中で視野が広がること
- 資格を取得してスキルアップすること
- プライベートと両立しながら心が安定すること
など、人によって「目指す成長」はまったく違いますよね。
「やりがい」も同じです。
達成感、人に感謝されること、売上げが上がること、得意なことで貢献できること…
その中身を知らなければ、相談のゴールも設定できません。
曖昧な言葉にこそ、その人の価値観をひも解くヒントが隠されているのです。
なぜ「あいまいな言葉」を聞くのか?
理由はシンプルで、誤解が生じやすいからです。
相談者は「成長=多くの売り上げがあがるようになること」と思っていても、キャリアコンサルタントが「成長=チームをうまく率いること」と捉えていたら、話がかみ合わないですよね。
本人が「やりがいがある職場」と言っていたのに、企業側の提示する仕事が、本人にとって「やりがいがない」ものだった場合、
「思っていたのと違う…」というミスマッチが起きてしまいます。
つまり、言葉の解像度を上げることは、ミスマッチを防ぐ手がかりになるのです。
あいまいな言葉の認識の差を少なくすることが、目標やゴールに向かう第一歩になってくるのです。
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どうやって“訊く”か──言葉の定義を丁寧に

では、どうやって訊いていけばよいのでしょうか。
ここで注意したいのが、「言葉尻をとらえる」ような問いかけにならないこと。
たとえば──
❌「成長ってどういう意味ですか?」
→ 詰問調に聞こえると、「え、バカにされてる?」と誤解されることも。
✅「成長とおっしゃったんですが、どんなふうに成長したいと感じているのか、もう少しお聞かせいただけますか?」
→ 興味をもって丁寧に訊く姿勢が大切です。
✅「次は働きやすい職場に行きたいとのことですが、○○さんにとっての働きやすさはどんなイメージでしょうか。これまで働きやすかった、過ごしやすかった職場ってありましたか?」
→好ましいイメージを共有していくのに効果的です。
あるいは、
✅「たとえば過去に“やりがい”を感じた仕事って、どんなものでしたか?」
というように、“過去の経験”に焦点を当てて訊くのも、手掛かりになるでしょう。
ちなみに私は、電話相談で相談者を不快に感じさせてしまった経験があります。
詰問しているつもりはなかったのですが、後日アンケートに「揚げ足を取られたようで悲しかった」とご意見をいただきました。
相談者が使った言葉をそのまま繰り返してしまったことで、そのように感じたのでしょう。
十分な信頼関係が構築できていなかった、聞き方に配慮が足りなかったなと深く反省し、大変貴重な学びを得ました。
電話相談では表情などが伝わらないので、特に声のトーンや言葉のチョイスに注意を払う必要があると感じています。
相談者がこちらの言葉を受け止められる状況にあるのか、などをより慎重に考えつつ接していく姿勢が必要であるということに改めて気づかされた大切な経験です。
あいまいな言葉から、価値観をひも解く
言葉の奥にある「その人らしさ」を見つけていくことが、キャリアコンサルティングの醍醐味です。
「十分な給料」とは、月にどれくらいあれば安心して暮らせると感じるのか。
人によっては100万でも少ない、10万円で十分、など価値観は様々でしょう。
「働きやすい職場」とは、リモートや時短ができる柔軟な仕組みのことなのか、それとも人間関係がフラットな環境、尊敬できる上司や同僚がいる職場のことなのか。
言葉を丁寧に紐解いていくと、相談者が本当に求めている働き方や生活のイメージが浮かび上がってきます。
ただし、前述のように、訊き方には細心の注意が必要です。
- 相手が否定されたと感じないように
- 馬鹿にされた、試されていると感じさせないように
- 気持ちに寄り添う言葉選びをする
このようなコミュニケーションが、相談者との信頼関係を深め、本音や奥にある思いを引き出すきっかけになります。
「あいまいさ」には”願い”が詰まっている
相談の場において“あいまいな言葉”は悪いものではありません。
それは、まだ整理されていない「思い」のかたまりであり、そこには、本人すら気づいていない価値観や願いが詰まっているのです。
キャリアコンサルタントは、その「思いのかたまり」を少しずつ言葉に変えていく、そんなお手伝いをする役割でもあります。
言葉を丁寧に訊くこと──
それは、相手を知り、自分を知り、よりよい選択へと導いていく、小さな一歩です。
相談者の心の内を、明確にしていくお手伝いをしていきましょう。
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