キャリアコンサルタントの支援の現場で
「プロの立場から具体的な、客観的なアドバイスが欲しいんです」
と相談者から求められることがあります。
迷っている。決めかねている。苦しさから抜け出したい。
——そんなお気持ちから出る言葉と理解しつつも、基本的には「極力アドバイスはしない」スタンスを大切にしています。
なぜでしょうか?
「答えを出してほしい」と思う気持ちの背景
「どの仕事が向いていると思いますか?」
「この年齢で転職って出来るんでしょうか?」
「どの資格が人気がありますか?」
「プロの立場から客観的なアドバイスが欲しい」
キャリア相談を受ける中で、こういった質問・要望を受けることがよくあります。
こうした問いの奥には
「自分の決断に自信がない」
「誰かに決めて欲しい」
「このモヤモヤからすぐに抜け出したい」
という想いがあることがあります。
「手っ取り早く答えが欲しい」
という想いや
「失敗して傷つきたくない」
という不安が隠れていることも少なくありません。
✔ 誰かに決めてもらった方がラク。
✔ 背中を押してもらった方が安心。
ただ、自分以外の意見をもとにした決断が積み重なると『自分の人生の舵を取る感覚』が少しずつ薄れていってしまうように思います。
自ら比較検討して決断する、決断したことに責任を負う、といった覚悟を持つことで人は成長できる面もあるのではないでしょうか。
結果的にうまく行かなかったとしても、そこから多くを学び、今後の成長や判断の軸につながる ”種” を得られるのです。
他人の基準に影響された結果、起こること
アドバイスを受けて「一時的にスッキリする」ことはあっても、実はそれが「行動」につながらない場合も多いものです。
うまくいかなかったとき、
「〇〇さんにそう言われたからやったのに…」
と、人のせいにしてしまう。
こうしたループを繰り返すと「自分で考える力」「選ぶ力」「決める力」が育ちにくくなります。
それが要因で、短期離職やキャリア迷子になるケースにも多く出会ってきました。
一時的に楽にはなるけど、いずれまた同じ課題に直面する。
だとしたら、一見遠回りに見えても立ち止まって自分を振り返り、
十分吟味して選び取るほうが納得感も増すのではないでしょうか。
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支援者として“自分で迷い、選ぶ過程”を支える
キャリアコンサルタントの役割は 相談者が自らの人生に主体性を取り戻すサポートをすること だと考えています。
ですから、
「こうしたらどうですか?」
「あなたにはこれが合っていると思います」
と即答してしまうのではなく、いったん
「いくつか選択肢が浮かびました。A案とB案、どちらがご自身のお考えと近いですか?」
「ひとつの案ですが、○○という道も考えられそうです、どう感じますか?」
「人気の資格、というのも気になるところですが、最終的にはご自身が興味が持てそうか、が大切になってきます。いかがでしょうか?」
などと、提案はしつつも、最終判断はあくまでご本人に委ねる 姿勢を大切にしたいと考えています。
最初は【Yes/No】 からスモールステップで選択・決断することに慣れてもらう。
また、
「これはちょっと違うかも」と気づくことも、実はとても大切です。
「違う」と思う反対側に「なりたい」「ありたい」姿が見えてくることもありますよ。
「やりたくないこと」「嫌なこと」からその逆側にある「希望」「願い」を明確にしていくのもいいでしょう。
比較検討をする過程そのものが、自分の価値観や判断基準を育てるのではないでしょうか。
「今は決める力が弱っている」
「材料が揃えば自分で決められる」
そう信じてじっくりと付き合う胆力が支援者側にも必要なのではないかと感じています。
判断の材料になりそうな情報を提供することには労力を惜しまない。
そして、すべての情報を知らなくても、どこでその情報が手に入りそうかを一緒にしらべてみることも支援のひとつの形と言えるでしょう。
「アドバイスなし」は ”自己決定”を育む支援
とはいえ、長年「自分で決める」という経験が少なかった方にとって、いきなり主体的に選ぶのはハードルが高いもの。
だからこそ、寄り添いながら、少しずつ「選ぶ力」を一緒に育てていく支援が必要なのだと思います。
「こういう方向性も考えられますね」
「いまの気持ちを大切にするなら、こちらかもしれませんね」
——そんな言葉が、相談者自身が本来持っている「比較する力」「判断する力」を少しずつ取り戻していく手がかりになればと思いつつ関わっています。
人生の課題に立ち向かうとき、自分で調べて比較、選択・決断を出来る力が身についたなら、
再び壁が立ちはだかったときには軽やかに乗り越えていけるのではないでしょうか。
誰もが、自分の人生を迷いながら歩いています。
ときには失敗したり、遠回りしたり。
でもその中で、
「これは私の選択だった」
と思えることが、その後の人生の糧になります。
キャリアコンサルタントとしてできることは、相談者が自分の足でしっかり歩けるように、共にあること。
今後同じことが起こったときに、自分で選べるように。
力強い未来につながっていくと信じて、支援の道を共に歩んでいきましょう。
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