小さなスペシャルティコーヒーショップで働いています。
夏場は暑さを和らげるように、テイクアウトのコーヒーをお出ししています。
お店がすいているときは、常連のお客様が一杯のコーヒーを飲み終えるまでのわずかな時間、何気ない会話をすることが楽しみのひとつ。
日常の中にある気取らないコミュニケーションだからこそ、思わず本音が出たり、思いがけず深い話になったり。
そんなひとコマについて綴ってみたいと思います。
一杯のコーヒーが心をほどく 物語が語られるひととき
スペシャルティーコーヒー豆店でときどき販売スタッフをしています。
普段はコーヒー豆を購入されるお客様も、時折あまりの暑さにテイクアウトのアイスコーヒーを店内で飲んでいかれることがあります。
夏場限定の冷たくてまろやかな水出しアイスコーヒーを、氷たっぷりのクリアカップに注いでお渡しします。
また、冬場はフォームミルクに濃いエスプレッソを注いだカフェラテをご提供。
飲み終えるまでのわずかなひととき、気軽なおしゃべりの時間になることがあります。
こちらから働きかけるというよりも、お客様がふと心をほどいて何気なく話し出す——
そんな瞬間に立ち会えるのが、とても楽しいのです。
人柄がにじむ、さまざまなストーリーとリアクション
近所のお店の話。
お仕事の話。
子どもや孫の話。
しがらみないからこそ、素直に話せることもあるようです。
まるで「プチキャリア相談」といった感じです。
ある方はコーヒー豆の種類をきっかけに、若い頃仕事で海外に住んでいた時のお話を。
ある方は、ずいぶん以前に亡くなった旦那様の仏壇に、毎日コーヒーをお供えしているお話を。
ある方は、一緒に住んでいる娘さんとの距離感や、残りの人生をどんなふうに過ごしたいかを。
時間はいっぱいあるので図書館で本を借りているのよ、と借りた本や作家についてのお話を。
短い時間でもその人の人となり、これまで生きてきた人生を表しているな、と興味深くお話を伺います。
飲み終えたあと、お客様の反応は実にさまざま。
すっと立ち去る方もいれば、「ごちそうさま」と微笑んでくださる方、感想を伝えてくれる方、その場で気に入ってコーヒー豆を追加購入される方も。
それぞれの言葉や仕草には、その人の性格や暮らしぶりの一端がにじんでいて、こちらもなんだか温かな気持ちになります。
リアクションの大小に優劣はありませんが、「あ、こういう表現もあるんだな」と学ばせてもらうこともしばしば。
一杯のコーヒーをきっかけに、その人の生きてきたこれまでを垣間見せてくれるのです。
対面販売の喜び ― 豊かな時間を創るささやかなお手伝い

対面で接客するのは、思った以上にエネルギーが要ります。
急いでるお客様には、テキパキと商品を準備してレジを打つ。
じっくり選びたそうな方はしばらくお声はかけず、聞きたそうなタイミングで言葉をかけてみる。
同時に数名の方が来れば、ストレスがないようベンチに座ってお待ちいただく案内もしています。
大変なこともあれど、それ以上に喜びが大きいのも事実。
とくに「自分が本当に良いと思える商品」をおすすめしていると、自然と会話にも熱がこもります。
「おいしいと思ったら買っていただけたらうれしい」くらいの気持ちで、自然体でいられるのが、この仕事のいいところ。
売上のこと、原材料費のことなど、オーナーはさまざまな悩みを抱えているとは思います。
だけど、それでもお客様とのやりとりがあるからこそ、日々の営みが支えられているのだと感じています。
日常の生活を豊かにする至福ののコーヒー豆販売【自家焙煎珈琲カフェ・ヴェルディ】
コーヒー体験から交差する言葉 それぞれの物語を味わう
ほんの一杯のコーヒーですが、そこにはいろんな物語が詰まっています。
暑い日に一息つける時間。
思いがけない出会いや、会話の種。
街の情報。
世界情勢。
「ありがとう」「ごちそうさま」「おいしかったわ」——
そんな言葉が自然に飛び交う場所に立てることが、かけがえのない経験だと感じています。
コーヒーを通して交わされる言葉や笑顔には、日々の暮らしの中でこぼれ落ちそうなものを、そっとすくい上げてくれる力がある気がします。
特に近隣の高齢の常連さんにとっては、ちょっとしたお出かけで買い物をして、ふとした会話を交わすことが孤立防止にもつながるのではないか、と最近強く感じています。
あなたも、日々の中で誰かと交わすちいさな一言に、ふと心があたたかくなったことはありませんか?
もし忙しさに追われて、誰かとゆっくり話す余裕がなかったら——
一杯のコーヒーをゆっくりと味わう間、自分を緩めてあげてください。
言葉はなくても、心がふっと軽くなることがきっとありますよ。
【自家焙煎珈琲カフェ・ヴェルディ】


