キャリア相談の場では「転職したい」「今の仕事がつらい」といった相談が多く寄せられます。
けれど、話を丁寧に聴いていくと、相談者が語る問題と本当に苦しんでいる原因が異なることも少なくありません。
今回は、私自身が面談で大切にしている「問題の奥にある課題の見立て」についてまとめました。
インテーク面談で何を意識したらよいか悩んでいる方の参考になれば幸いです。
相談に来る理由:自分が思っている問題と、本当の課題は違う
キャリア相談では、相談者が最初に持ってくるテーマがありますよね。
例えば、
- 転職したい
- 今の仕事を辞めたい
- やりたいことがわからない
- 上司との関係に悩んでいる
といった内容です。
しかし、面談を進める中で、そのテーマそのものが問題ではないケースも多くあります。
「転職したい」の背景には、
- 自信のなさ
- 承認されない苦しさ
- 過度な完璧主義
- 将来への漠然とした不安
- 上司・同僚との人間関係
などが隠れていることもあります。
相談者が語る言葉をそのまま受け取るだけでなく、
「この方は本当は何に苦しんでいるのだろう…?」
という視点も同時に持ちながらお話を聞いていくことが大切だと感じます。
「理想の自分」「現実の自分」のズレに注目する
多くの相談者は、何らかの「不一致感」を抱えているから相談に来ます。
例えば、
「こんなに頑張っているのに評価されない」
「キャリアアップしたいけどどうしたらよいかわからない」
「挑戦したい気持ちはあるけど踏み出せない」
つまり、
「こうありたい自分」と
「現状の自分」
にギャップが存在しています。
何かが「こうありたい自分」を阻んでいる。
ロジャーズの理論では『自己概念と経験との不一致が大きくなると、人は不安や葛藤を抱えやすくなる』とされています。
面談では、このズレがどこにあるのかを丁寧に見ていくことがとても重要です。
「本当にできない」のか「そう思っている」のか
面談の中で私が意識しているのは、相談者の認知の枠組みを理解することです。
例えば、
「人前で話すのが苦手です」
という言葉があったとします。
しかし詳しく聴いてみると、
- 会議の進行を任されている
- 後輩指導をしている
- プレゼン経験もある
というケースがあったります。
もちろん「苦手」という感覚そのものを否定するわけではありません。
ただ、
- 本当にできないのか
- 苦手意識が強いのか
- 過去の経験に影響されているのか
- 自己に課したハードルが高いのか
など様々な可能性を一緒に見ていくことはできるでしょう。
キャリアコンサルタントの役割は、相談者の認知を修正することではなく、自分自身で気づけるよう問いかけ、考えてもらうことなのだと思います。
それにより、相談者自身が解決策まで見出していくことがあります。
そんな瞬間に立ち会えたなら、私たちも大きなやりがいと感じることでしょう。
一般社団法人地域連携プラットフォーム
初回面談は「絡まった問題をほどく」で終わることも
初回面談では、解決策までたどり着かないこともあります。
…というより、ほとんどのケースがそうかもしれません。
むしろ、
「何が問題なのかを整理する」
ことが仮ゴールとなる場合も少なくありません。
相談者自身が、
「自分は何に悩んでいたのか」
「あぁ、私はこれが嫌だったんだ」
「子の思い込みが自分の行動を邪魔していたんだ」
といったことに気づけていないことが多いからです。
だからこそ、
- 事実を整理する
- 感情を受け止める
- 問題を一緒に探す
それを繰り返しつつ根気強く伴走する姿勢が大切になります。
焦って答えを出そうとするよりも、
「まずは一緒に整理していきましょう」
という関わりの方が、結果的に深い気づきにつながることもあります。
キャリアコンサルタントは、魔法のような答えを与える人ではありません。
相談者が自分自身の答えを見つけられるよう共に歩む存在です。
そのためにも、表面的な問題だけでなく、その奥にある価値観や感情に耳を澄ませる姿勢を忘れずにいたいと思っています。
本質的な課題を見極める「二重の視点」
初回面談では、クライエントの語る事実や感情を丁寧に聴きながら「この方はいったい何が苦しいのだろう?」という視点を忘れない、というお話をしましたね。
- 表面に現れている問題(たとえば「転職したい」)の背景にある感情や価値観
- 何にこだわっているのか、何を守ろうとしているのか
- 現状を受け入れられない心理的な抵抗は何か
例えば「転職を考えている」「転職したほうがいいのかとも思う」ではニュアンスが違いますよね。
転職を考えたいと思うほどうまく行っていないことが何なのか、丁寧に聞いていく必要があるでしょう。
根本的な苦しさがどこからきているのかを明らかにして、手立てがないかを一緒に考えていく姿勢も大切です。
こうした視点を持ち続けることで、相談者が語っていない部分、まだ気づいていない部分が徐々に焦点化されていきます。
「一緒に整理しましょう」戦略を考えるチームになる
特に初回は、相談者自身も「何が問題か分かっていない」状態であることが多くあります。
この段階で無理に方向性や解決策を提示しようとすると、対話が浅くなることも。
「やってみます」と答えて帰ったとしても、本当に腹落ちして行動に移すことはほぼないでしょう。
まずは、
- 情報を丁寧に整理する
- 感情をしっかり受け止める
- 問題を共に見つける
といった姿勢で関わってみましょう。
「焦らず、一緒に整理していきましょう」と言葉を添えることで、相談者も安心して語れるようになります。

キャリアコンサルタントにできること
「転職したい」
「自信がない」
「今の仕事を辞めたい」
その言葉の奥には、
✔ 理想と現実のギャップ
✔ 大切にしたい価値観
✔ 言葉にならない不安
✔ 自覚できていない感情
そうしたものが隠れています。
私たちキャリアコンサルタントは、目の前の問題を急いで解決しようとするのではなく、
相談者が本当に困っていることは何なのか、まずは存分に言葉にするお手伝いをすることが大きな役割なのではないでしょうか。
傾聴し、整理し、問いかける。
その積み重ねによって、相談者自身が自分の気持ちや考えに少しずつ気づいていく。
私はそれこそが、キャリアコンサルティングの醍醐味だと感じています。
相談者が答えを見つける瞬間に立ち会えること。
そして、自分では気づいていなかった可能性に目を向けるお手伝いができること。
それはとても奥深く、難しいことです。
もし今、面談の進め方や見立てに迷うことがあったとしても、焦らなくて大丈夫です。
相談者の言葉に丁寧に耳を傾けながら「この方は本当は何に悩んでいるのだろう」と問い続けること。
難しくても現場に立ち続けること。
その姿勢そのものが、きっと相談者の安心感につながっていくはずです。
あなたは最近、相談者のどんな言葉の奥にある想いを受け取ったでしょうか。
その小さな気づきが、次の面談をより豊かなものにしてくれるかもしれません。
あなたの積み重ねた日々が、相談者の未来を照らす小さな光になると信じています。
共に歩んでいきましょう。
キャリアカウンセラーの国家資格

